今月のボトルに取り上げた、94番大天使ミカエルはタロットカードでは、「16タワー」に対応しています。大天使ミカエルは、古いものが崩壊し、新しいものが生まれることをサポートしているのです。コラムでは、ウェイト版タロットカードの「16タワー」のカードをご紹介したいと思います。
まず、ウェイト版を作ったアーサー・エドワード・ウェイトからご紹介します。彼は、秘密結社で、実践派カバラ集団の「黄金の暁団(ゴールデン・ドーン)」の頭領でした。1910年にこのタロットカードは誕生しています。当時、ユダヤ神秘主義としてのカバラの復興運動が起こっていた中で、ウェイトは生命の木とタロットカードとを結び付けて解釈し、それを入れ込んで作成しました。その絵柄の中には、エジプトとキリスト教を融合させたものも入っています。このカードは特にアメリカで主流に使われています。
78枚のカードは二つに大きくわかxれます。22枚の大アルカナと56枚の小アルカナです。「アルカナ」とは「秘儀」という意味です。大アルカナは22枚の意識状態や心理状態を理解することで、精神の柔軟性を発達させるもの。宇宙のリズム、星の動きとリンクしていて、22枚のカードがそれぞれ12星座と10惑星と対応しています。深い洞察が必要で、運命的なカードです。小アルカナは大アルカナをよりわかりやすくしてくれるものです。4つの元素「火・風・水・地」の4つの世界に分かれていて、その時の状況や現象や波などを表し、運勢的です。
今回、ご紹介する「タワー」のカードは大アルカナのカードの中で16番目のカードになります。惑星は火星に対応します。火星の基本のメッセージはダイナミックさや活動力、勇気を見出すこと。サバイバルや意志の力、情熱の方向、野心と攻撃性、権力、争いなどです。
絵柄を見て行きましょう。このタワー(塔)は、バベルの塔がモデルだと言われています、神に近づこうとして建てたが、神の怒りで雷が落ち、崩壊したというお話しが残っています。雷とは日本語で「かみなり=神鳴り」というように、神の権力や怒りを表すもの。神と出会う直感やインスピレーションでもあります。ギリシャ神話で有名なゼウスも、インドの神様インドウも、北欧の神のトールも雷で表わされています。
塔からは二人の貴族が落ちています。王冠は、支配者の象徴であり、黄金で作られているように太陽を中心とした、父権的な世界像の代表者を表しています。王冠は雷によって、吹き飛ばされ、火が上がっています。火は内側からも上がり、窓から勢いよく火が出ています。それは、外側からやってくる大いなる意志による崩壊と、それにより起こる内側からの変容を表わしています。
「塔」は人間の意識の構造を示すシンボルです。長方形は現実を表す正方形の半分です。それは、ものごとの半分しか見えていないことを表し、偏った意識構造を表しているのです。王冠が父権的な世界像の象徴であるように、この偏りは、男性性のみを発達させ、女性性を大切にしなかったことを表していると思います。火星も男性性を表す惑星です。
塔と3つの窓で4つの4角形が描かれています。4×4=16。16はタワーのカードにつけられた数です。4つの元素×時空秩序としての数(4)=強化された「4」であり、堅い結晶のイメージです。硬いものほど壊れやすく、壊れる時には一気に切れるが走って粉々になります。凝り固まった意識、人格は他の考え方を受け入れにくく、戦いが起きやすくなります。
光の粒のように見えるものが22個ありますが、これはヘブライ文字の「ヨッド」です。ヨッドの意味は困難や苦難を光に変えることであり、悟ることです。22というのは大アルカナのカードの枚数です。困難な出来事から、いかに気づきを得て、変容、成長していけるのかがテーマなのです。
このカードは錬金術において、「輝ける破滅に突入した」といわれています。このカードで私たちは自我の殻(塔)を壊して行く力を身につけることを学びます。「塔」「建物」「家」は人間の意識の構造を示すシンボルです。人を保護し、安定させるものです。しかし、自由な発展を妨げ、習慣の中に怠惰に沈んでいく邪魔な殻として働くこともあり、チャレンジ精神を失いやすくなります。タワーの力はだめな時にはいつでも解体し、無に戻し、またやり直す柔軟性を手に入れることです。自ら塔を壊す勇気がなくても、外からの雷のような衝撃(災難)を利用して、半ば嫌々ながら、しかし本心では必要性を痛感して「塔」への執着から離れる結果になります。
日本の場合、「家」は紙や木で作られた軽い家。それは日本人の自我、人格が重すぎず、軽やかであることを表しています。西洋の家は石でできた硬くて重いもの。強烈な雷でタワーを崩壊しないかぎり、その家からは出られません。家(自我・人格)は重すぎない方がいいのです。重いと、理解力を育んだり、より良い方向へと変化・成長がしにくくなります。もっと軽い家はネイティブアメリカンの「ティピ」や、モンゴルの「パオ」でしょう。自然と調和した生活をしている人々ほど家は軽いのかもしれません。
殻が硬いほど雷は強くなります。しがみつきたい人には恐怖になり、自由になりたい人には良きものとして感じられます。11枚目の「強さ」のカード以降は個人として自由になることがテーマになっているのです。
本質と、育ってきた環境の中からつくられた自分と思い込んでいるものとの不一致を、雷は調整します。雷によって偏った意識構造、人格は壊され、整合性をとるために一度解体されるのです。今、わたしたちはうお座の時代から水がめ座の時代への移行期にいます。水がめ座の時代のテーマは女神性の復興であり、男性性と女性性の統合であり、対等なパートナーシップです。今、私たちは男性性優位だった古い体制を壊し、女性性とバランスがとれた新しい体制を築いていく時に来ているのだと思います。
生命の木でこのカードは「ホド」と「ネツァク」をつなぐパスに対応します。ホドは左の柱にあり、左の柱は「形」と関係し、知識や経験や固めていき、強い自我を形成する働きがあります。ネツァクは右の柱にあり、右の柱は「力」と関係し、明確なスタイルや決まったものをもたず、無形に向かう働きがあります。この相反する二つをつなぐのがタワーです。硬い形のものと形が無くなった力とのぶつかり合いなのです。ホドは知識的な蓄積をしていく癖があります。一つのことについて詳しくなるとそれに対する自信とプライドが強まってきます。左の柱は外側には関心を抱かず、新しい情報に対して疎くなり、閉鎖的になりやすいのです。ネツァクは外側の影響に対して、素直に受け入れる受容性を示しています。どんどん外側からの影響を持ちこんでくるのです。ネツァクからやってくる影響によってホドのプライドは見事に壊されていきます。16のタワーは「目からうろこ」でもあるのです。 |